1507言うほどじゃないけど

昨年末からTwitterを大いに賑わせた森もり子さんの連作ツイート「言うほどじゃないけど」。その後、書籍にまとまり、今年の4月に刊行された。ツイートを目にした多くの人たちから激しい賛否が寄せられた内容を、状況が落ち着いた今、自身が振り返る。大炎上も巻き起こした問題作を描いた真意とは……?

 

 

――Twitterで評判を呼んでいた「言うほどじゃないけど」が書籍化されて3ヵ月が経ちますが、発売後の反響はいかがですか?

森もり子(以下、森) 買ってくれた方から色々と感想をいただいています。「明日から仕事頑張れます」とか「クズな自分の励みになります」とか。とても嬉しいですね。

 ――書きはじめた動機はどんな感じだったんですか?

 これはタイトルに繋がりますけど、「言いたいこと」っていう訳ではなくて、本当に「言うほどじゃないこと」なんです。自分が思っていることは正しくないし、言ったらみんな怒って空気悪くなるだろうけど、たまには正しくないことを言ってもいいじゃん!って。だから本の帯に「世の正論に異議アリ!!」って書いてありますけど、そこまで強い主張じゃないんですよ(笑)。

――本当にただのツイート(呟き)みたいな?

 そうですね、遊びというか。ギャグ漫画を描きたかったので。

――フォロワーや読者の方々の反応も結構分かれましたよね。

 リプライや本の感想などで「言うほどじゃないことなら書かなくていいじゃん」って言われて……いや、まあ、そうなんだけど……こういう空気って面白くない?って。共感はできないけど面白いってことってあるじゃんって。だから一番最初に想定してたのは、「共感できないけどこの感じいい」という反応があればいいなって気持ちでした。

――その辺りは上手く伝わったと思われますか?

 Twitterで見かけた意見の中に「このネタは、作者としては必ずしも共感を目的としていない」というのがあって、それはわかっていただいているなと。「鋭い!」と思いました。だって、もっと共感を得たいなら違う描き方がありますよ。キャラクターを正義の味方っぽく描いたり、可愛く描いたりすれば、もっと共感してもらえる。でも、この漫画では少しクレイジーなキャラクターにしたかったんです。実際、そういう部分ってみんないろいろ持ってるじゃないですか。特にTwitterとかに投稿される漫画って「共感してほしい」っていうのが多いけど、そうじゃなくて、このよくわかんない主人公たちが間違ったことを大声で言う。それが面白いんじゃないかって。

――じゃあ、森さんもこの漫画の主人公たちの言ってることはおかしいと思ってらっしゃるんですか?

 はい、明らかにおかしいじゃないですか(笑)。間違ってますよ。例えば、このネタとか。

 

29 どう考えても間違ってること言ってますよ。でも間違ってることがあってもいいじゃん、もっと自由でいいじゃん、正解だけじゃなくて!っていうことなんです。この本で伝えたいことがあるとすれば、誰だって間違った意見やわがままな意見がある。それを言ってもいいじゃんというところですね。

――あんまりその辺伝わってないような……。逆に、森さん自身がこういう主張を持ってるんじゃないかって思われて、炎上してますよね。

 そうなんですよ、性格悪く見られるんですよね。こんなに優しいのに(笑)。ちなみにこのネタが一番炎上しましたね。

 

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 ここから激しく炎上していきましたね。でも、むしろ私もこの男性みたいなことをやっちゃいがちなんですよ。だって相手にこう聞かれたら、自分の好きな作品めっちゃ言いたくなりますよ、普通。ドンドン自分が語りたい。ただ、他人へのオススメって、自分の好きなものじゃなくて相手に合わせたもののほうがいいよなっていうのは、そんな自分でもわかるじゃないですか。あと、このネタはモテないこと自体より「モテない」って言われることがツライなーと思いますね。それにしてもこの女性キャラはちょっとムカつきますね、話聞く姿勢とか(笑)。

――森さん自身が傷つくようなネタも入れてるんですね(笑)

 ええ。例えば、このネタもそうですね。

 

50 思いやりをぶん投げちゃう。こういうのは傷つきますよね。でも言わないけど、こういう気持ちってあったりすると思うんですよ。1コマ目のように言ってくれたら、まず嬉しい。でも、嬉しいんだけどなんか違うな?みたいな感じ。でももちろん自分が言われたら、かなり傷つきますよ。

――善意で言ってくれてるんだけど、「でも違う」みたいな。このネタもそうですね。

 

95 これは相手の熱量が高ければ高いほど「ちょっと……」ってなりますね。「この映画、絶対観て」とか言われると、「いや……」って。逆に「あれ面白かったよー」ぐらいの軽い感じだと観たくなる。

――善意が裏目に出ちゃう感じだと、このネタもそうですね。

 

43 そうそう、お土産とかね。このお土産、何年後かに捨てるなー、みたいな感覚ってありますよね。悪いから、すぐには捨てないけどっていう。

――主人公以外の人たちはみんな結構良い人ですよね? 世の中的にはこういう人多いのはいいんじゃないかと思っちゃいますが……。

 

121 友達にしたいのはこっちの人たちですよね。でも、誰だってどちらの立場になることもあると思うんですよ。このネタみたく、テンション上がってきた人を見るとテンション下がる、でも自分が上がる時もある。誰かが上がれば誰かが下がるみたいな。会社とかの人間関係とか飲み会なんかでもそうだと思うんですけど。

 

90 でも、ここまで来るとちょっとムカつくかも(笑)。でももちろん、彼は正しいと思いますよ。

――最後に本のアピールをお願いしてもいいですか?

 この本、「ゆとり世代の主張!」みたいな感じで本の帯にも書いてますけど、どの世代にも関わらずこういうのあると思うんです。自分がゆとり世代なので、内容的には上司とか年上に向けて言っているやつが多めだけど、全然同じ年代でもあるなと。だから年齢問わず、気になったら読んでみてほしいですね。あと大事なのは、繰り返しになっちゃいますけど、これは主人公たちを笑う漫画で、共感を狙って描いてる訳じゃないってところですね。その上で、でも「ちょっと共感できる」というのがこの本の個性というか、オリジナリティなんじゃないかって思ってます。まあそんな深く考えてないんですけど(笑)

――なるほど。主人公たちを笑ってみてね、という感じなんですね。ちなみに、森さんはタランティーノ映画のどこが好きなんですか?

 テンポの良さですね。特に『レザボア・ドッグス』の冒頭のシーン。強盗する前にカフェでマドンナの「ライク・ア・ヴァージン」について語るシーンがあるんですけど、それが最高。もちろん、漫画でも触れた『パルプ・フィクション』や『イングロリア…

――ありがとうございました!